20年前の文章

最新のMacBook Proを買った。この20数年で、かれこれ10台目くらいか。

20年前にネット投票を駆使したオーディションで音楽の世界に入った。優勝者には高橋幸宏さんプロデュースでCDデビューできるという特典があった。

そんな自分が、先日オーディションの審査委員長を務めた。優勝者に曲を提供するという約束で。時間の流れをひしひしと感じる。

20年前、ブログという言葉も無い頃、オーディションを協賛していたNIFTYさんに自分のサイトを作ってもらった。そこに掲載していた文章や写真を、最近ハードディスクから発掘した。

幸宏さんも、もういない。当時を思い出して、ここに晒してみる。


- おとなの作法 -

例えば赤い玉が空中に浮かんでいるのを見つける。すかさず緑の玉を探し出す。赤の反対色である緑の玉を。周りに緑の玉が見つからない場合は、しょうがないから空中から取り出す。そして赤い玉から離れる。距離をつかみながら離れる。そうしておもむろに振り返る。赤い玉までの距離は、自分の遠投がギリギリ届く距離。赤い玉に当たれば、きっとまぶしい光が放たれる。その光を想像し、緑の玉を手に大きく振りかぶる。



- 作法 1/10 -

まず赤い玉を見つけること。それが目の高さにあるのか、腰の高さにあるのか。それが手の届く距離にあるのか、3歩近づかないと届かないのか。それを知ること。心配しなくても良い。何度もやっているうちに、きっと自然に覚える。何も考えなくても、体で覚える。

- 作法 2/10 -

そして、その色が赤だと認識する。ちょっと朱色っぽくても、とりあえず赤だと決めてしまうこと。そんな大胆さを持つこと。そうすれば、それを見ていない人にも簡単に伝えることが出来る。その一方で、実は朱色っぽい色なんだと分かっていること。そうすれば、それを指摘されたときにも動じない。

- 作法 3/10 -

色んな色を知っていれば、赤い玉に何色をぶつけるのが楽しいかを考えることが出来る。何色をぶつけるか、色んな選択肢が浮かぶ。どこにどんな色の玉があったかが頭に入っていれば、瞬時にその玉を取りに行くことが出来る。どこにどんな色の玉があったかが頭に入っていれば、思い浮かんだ色の玉がどこにも無いこともすぐにわかる。

- 作法 4/10 -

思い浮かんだ色の玉がどこにもないとき。そんなときは自分で作り出せば良い。あの色とあの色の中間の色、というふうに。あの色とあの色とあの色を足して3で割るなんて難しいことは、実は人間には出来ない。あの色とあの色の間。色んな色を知っていれば、新しい色を作るには2つで充分なのだ。


- 作法 5/10 -

赤い玉を見ずに、赤い玉から離れる。背中で赤い玉を感じながら離れる。赤い玉が今どの辺にあるか、想像しながら離れる。周りのものの位置関係でそれを想像し確認する。一つ一つの位置関係を順を追って考えれば、間違うことはまずない。だから、自分が投げる位置を決めるまでは、決して赤い玉を見る必要はない。見てはいけない。

- 作法 6/10 -

もしかしたら赤い玉は動いているかもしれない。動くほどではなくても、揺れているかもしれない。それまでの赤い玉の動きを見ていれば分かること。それまで動いていなければ、背中を向けている間も動いていないと決め付けてみよう。振り返ったときに動いていたとしたら、その時に考えれば良い。


- 作法 7/10 -

振り向いたときに思った位置に赤い玉が無い場合もある。なんらかの原因で赤い玉が動いてしまっていることもある。それはありえること。むしろ赤い玉が動いていなければ、それは感謝すべきこと。誰に感謝するか?誰だって良い。自分の周りにいつもいてくれる人でもいいし、そのときにたまたま目に付いた人でもいい。親兄弟でもいいし、神様でもいい。


- 作法 8/10 -

投げるときは風向きを考えて投げる。向かい風がいいとは限らないし。追い風がいいとも限らない。それに風向きは常に変わる。それでも風向きを考える。無風状態なんてことは、まず無い。風の吹かない世界なんてないのだから。


- 作法 9/10 -

赤い玉に緑の玉が当たった瞬間のことを想像する。そのときはきっと光が放たれる。それを想像する。それを信じる。当たらなかったときのことは考えない。先回りは邪魔なだけ。当たったときのまぶしさ、晴れがましさを想像する。想像し信じる。


- 作法 10/10 -

自分の遊びのルールは自分で作ること。作法は一つではない。自分が一番楽しめるルールは自分にしか作れない。自分が一番楽しめるルールを持っていれば、自分の変化に合わせてルールを変えることも出来る。そうすれば、あなたは一生楽しむことが出来る。



当時のディレクターが本にしようと言ってくれたが、写真の解像度が粗すぎるからという理由で断ったことを思い出した。今思えば、粗いかどうかなんてどうでもいいのに。もったいないことをしたのかもしれない。

Naohisa TANIGUCHI's Wafers Studio

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